令和6年12 月の「区長の談話室」(ゲスト:森本 英香 氏、関橋 知己 氏)
令和6年12月の区長の談話室
令和6年12月1日・8日放送 区長の談話室「環境の手入れってナニ?!」
※12月8日は1日の再放送です。
ゲストに、世田谷区環境審議会会長で早稲田大学法学部教授の森本 英香氏、北沢・代沢・代田地域のまちの植物を守り育てていくことを目的に発足した一般社団法人「シモキタ園藝部」の代表理事の関橋 知己氏のお二方をお招きし、「環境の手入れってナニ?!」をテーマにお送りします。
区では現在、世田谷区環境基本計画を見直しています。令和7年度を初年度とする新たな計画では、区民や事業者などが環境をよくするための活動「手入れ」を行い、将来にわたって良好な環境を保ち、人々の「手入れ」が加速している地域社会をめざします。この新たな計画について、環境の現状やシモキタ園藝部の活動とともに、今後の区が目指すべき取組みについて、対談しています。
(ゲスト:世田谷区環境審議会会長/早稲田大学法学部教授 森本 英香氏、一般社団法人「シモキタ園藝部」代表理事 関橋 知己氏)
テーマ・ゲスト紹介
- パーソナリティ:保坂区長、今日もよろしくお願いします。
- 区長:よろしくお願いします。
- パーソナリティ;今日は「環境の手入れってナニ?!」というテーマでお話を伺ってまいりたいと思います。早速お二人のゲストをご紹介します。お一人めは、早稲田大学法学部教授で、世田谷区環境審議会の会長も務めていらっしゃる森本英香さんです。森本さん、よろしくお願いします。
- 森本さん:はい、よろしくお願いします。
- パーソナリティ:区長、森本さんのプロフィール教えてください。
- 区長:はい、森本さんは、1981年に環境庁ができて10年ほどしたところで、環境庁に入られてその後環境に関する基本法だとかいろんな法律を改正、環境行政のエキスパート、そして、5年前まで環境省トップである事務次官を務められて、現在世田谷区環境審議会の会長をお願いしています。よろしくお願いします。森本さん:よろしくお願いします。
- パーソナリティ:森本さん、区長とのご交友も深くなりましたか?いかがですか?
- 森本さん:実は区長が国会議員の時に、私はまだぺーぺーの役人でしたけれども、区長が非常に鋭く質問されているのを横で拝見しておりました。ここで区長として活躍されているのは、本でも読み、それから実際の審議会の場でもいろいろ勉強させてもらって、とてもアクティブな区長さんだという風に思っております。
- パーソナリティ:よろしくお願いします。そしてもう一方ご紹介しましょう。シモキタ園藝部代表理事の関橋知己さんです。関橋さん、よろしくお願いします。
- 関橋さん:よろしくお願いします。
- パーソナリティ:ぜひ区長、関橋さんについてもご紹介ください。
- 区長:関橋さんはですね。今、メディアにも度々取り上げられている、下北沢は線路上部が快適なウォーキング空間、歩いて楽しいまちになったんですが、その要素の一つとして、緑を豊かにするということを、もう15年以上前から住民運動、市民運動として、「その緑が連なる線路上部ってグリーンラインって名付けたらどうですか?」という提言などをいただいていました。その後いろんな話し合いの中から下北沢に緑を豊かにするグループが出来上がり、そして線路上部の開発が出来上がりつつあるところに、「植栽の管理・維持運営管理を皆さんでどうですか?」という話が小田急電鉄並びに世田谷区からあって、それを、一般社団法人を作って担っていただいていて、大勢の登録ボランティアがいるそうです。その中心にいらっしゃるのが関橋さんです。
- パーソナリティ:皆さんの想いも受けて、そして区長からの思いも志も受けてということで、ご縁も深いんですよね。
- 関橋さん:区長になられた当初から様々な住民参加の機会を設けていただいて、そういう場でいろいろな意見に耳を傾けていただき、それが実現するっていう、素晴らしい勇気をくださっています。
- パーソナリティ:まさに皆さんのお力のもと、世田谷区の緑もどんどん増えているのかなと思うんですが、改めて区長、本日のテーマが「環境の手入れってナニ?!」ということで、詳しく聞かせていただけますか。
- 区長:やっぱり時代が変わったなと思うんですが、スペインとかシチリア島で大洪水が起きた。あるいはフィリピンにですね、11月なのに、台風が3つも4つも連続上陸と、こういうその異変を伝えるニュースばかりで、振り返ると多分、森本先生が環境庁に入られた80年代はですね、「自然を大切に」というステッカーが流行したりですね、「自然保護運動」ってそんな言葉があったなってことを思い出したんですが、今、その言葉はもう完全にないですよね。「命を大切に」となっていますよね。やっぱり自然のリズムを人間が壊してしまったと。どう修復するか、これがもう本当に大きな時代の変化だなという時に、この環境について世田谷区内でというのは、やっぱりグローバルな地球全体の動きと切っても切り離されない。それ全体を良くするには、住んでいるところでしっかりとライフスタイルの転換とか、緑を増やしたりとか、持続可能な世界に持っていくためのキーワードじゃないかなって受け止めているのが、「手入れ」っていう言葉なんですね。
環境危機の現状
- パーソナリティ:まさに自然に立ち返る意義があるのかなと思うんですが、森本さんはこの環境の問題についてどのように考えていらっしゃいますか。
- 森本さん:肌身で感じていることですけど、私が役所に入った頃1980年ですけれども、それから1990年代に京都議定書というのが作られて、温暖化がかなり大きな問題にはなっていましたけれども、あの時はリアルな問題ではなくて、将来50年後、100年後に問題だ。だから今から取り組まなくちゃいけないっていう議論だったんです。でも今全然そうではなくて、本当に現実の問題となって、もちろん皆さん方、今年が大変暑かったことってよくご存じだと思いますけど、気候変動だけじゃなくて、多分皆さん方が食べられるもの、例えば、お米であるとか、あるいは、みかんであるとか、ああいった果物の生産にも支障が出てきている。病気もですね、デング熱って南方の病気ですけど、日本で、東京で発生したりしています。そういう風に、健康の問題、それから食べ物の問題、そういうものに今や関わっていると日本だけじゃなくて、これが世界中の問題になっている。確かにトランプさんが大統領になられるということで、例えばアメリカが非常にその温暖化に後ろ向きになるんじゃないかっていう風な予測もありますけども、実はアメリカはですね、現実に再生エネルギーをどんどん入れている。太陽光発電、風力発電どんどん入れている。それは何でかというと、自分のところでエネルギーを生産するっていうのが国にとってもいいし、これは結果的な地球環境にもいい、こういうですね、温暖化対策、世界中の動きは多分、もう流れは止まらない。そこで、今区長がおっしゃったように、じゃあ世田谷区で何をするんだ、これが大きな課題になってくるのかなというふうに思います。
- パーソナリティ:世田谷からそして世界へ地球へということで切実な問題なのかなと思うんですが、その世田谷区で移り変わりを見ていらっしゃった関橋さんはこの環境の危機についてはいかがですか。
- 関橋さん:私の場合は、あくまで一般市民として緑の手入れをしているところからの実感なんですが、そうした緑の活動を始めて15年近くになるんですが、やはりここ最近、もう夏に外で作業するっていうのが、身の危険を感じるぐらいになってきていまして、特に今年も暑かったんですが、去年はさらに雨が降らなくて、それで植物が枯れないようにするために水やりをするのが大仕事になっていました。ただ、その植物に水やりをするっていうことが、近い将来もしかしたら禁止になるんじゃないかってちょっと不安に思っていて、「人が飲むための水がなくなるから植物にはあげる分がない」なんて言われたらどうしようっていうように不安に思ったりしています。それから、やはり最近皆さんよくおっしゃるのが、四季が薄れてしまっているということで、植物が花を咲かせる時期ですとか、葉を落とす時期を迷ってしまっているかなっていう風に感じる時があって。そうすると植物と共生している昆虫たちなども生きていくのが大変になりますし、植物の方も受粉がうまくいかなくなってという風になったら、生態系のバランスがどんどん壊れてしまうと思うんですよ。そうなった時にやはり植物っていうのは私たちの環境全体を支えてくれている大もとなので、その健康が損なわれたらっていう風に思うと、やはり本当に危機だっていう風に感じます。
環境への「手入れ」~世田谷区の環境基本計画の見直し
- パーソナリティ:区長、本当に環境問題深刻だなという風にも感じるんですが、お話にあったように今、世田谷区からというところで新しい環境基本計画の策定も進めていらっしゃるんですよね。どのようなことなのでしょうか。
- 区長:そうですね。ですから、やっぱりそういう意味で地球環境の異変というのが、森本会長がおっしゃったように、「近い将来、そういうリスクがあるよ」ということではなくて多分、その時の予想を遥かに超えてどんどん平均気温は上がるし、特に気温だけじゃなくて海水温がものすごく上がっていて、台風が多分12月もこれは発生してもおかしくないと。それから、魚の分布なんかも激変をしていますよね。そういった中で今、命の危険を夏の作業で感じるというお話がありましたけれども、やはり、食料をちゃんと作っていくということが、相当危機にさらされていくのかなと。日本は輸入に頼り切っているような状態ですので、そういう意味でこの気候の問題が食料不足、そしてそこには軍事的な紛争も…。今大きな紛争2つ、中東とウクライナでありますけれども、そういうリスクも含めて、人類が本当はもう一歩進化しなければいけない時期にあるのかなと思います。ただ、そういうことを大きなことも論じながら、まず住んでいる地域の中で何ができるのか。特に「子ども環境会議」という取組みを行なっているんですが、小学5年生、6年生ぐらいがものすごくこの地球環境の危機について深く考えていて。というのはやはり、自分たち自身が一番生存の危機にさらされるということを直感的に子どもたちは分かっていて、そういう意味ではそんな時代を作ってしまった大人の責任として、やっぱり子どもたちと一緒にパートナーシップを結びながら、そして日本だけに限らず、やはり気候危機の影響を受ける世界中の人たちと世田谷でつながると。そんなことができたらと。今までの環境政策をパラダイムチェンジというか、ちょっとステージが変わった時期にまとめていただいているというようなことになると思います。
- パーソナリティ:まさに環境の「手入れ」という表現で、自分ごとというか、発見して自分から発信できればというふうにも感じたりはするんですが、森本さん、改めて環境基本計画でも環境への「手入れ」という言葉が重要なポイントにもなっているんですよね。
- 森本さん:はい。これは環境基本計画の目玉というか、中心概念でございます。この「手入れ」っていうワードをですね、見つけ出していただいたのは実は区の職員の方がですね、原案で出していただいた。それを審議会で議論をさせていただいたんですけども、この「手入れ」っていうのは考えれば考えるほどにですね、重みがある言葉だと思っています。つまり、そのワードとして言うと、「手入れが行き届く」とかですね、あるいは「樹木の手入れ」とかですね、そういう言葉ですけども、そこにマインドが、心が入っていてですね、単に手を動かすだけじゃなくてですね、そういう気持ちを持つっていうことだと思うのです。それで、いろんな例を実は環境基本計画ではコラムで挙げさせていただいているんですけど、一番わかりやすいのはですね、例えば、関橋さんがおやりになっている植物を育てる。これはもうみんなの家でできることですけど、じゃあ、それをやるために例えば土がいりますよね。ところがよくコンクリートで結構固めていますよね。それを例えば土を表に出して活用するとか。これは区長の本にも書いてあったんですけど、雨水が降ってそれが排水溝に素直に流れてしまうと、これはもう単に下水に流れちゃうんですけど、排水溝をキュッと90度曲げるだけで庭に水が行き渡る。それによって植物が育つと。やることとしてはキュッと90度曲げるだけなんだけども、それが環境に役立つと。だから「手入れ」っていうのは日頃やっていることにですね、環境の心をちょっと入れると、それによって変わるっていうのがあります。例えば自転車に乗って活動するというのは、これはもとはと言えば自分の健康のためかもしれないけど、それは同時に車を使わないという意味で環境にもなる。そういうふうに、日頃の生活を、環境の観点からちょっと見直す、動かしていくっていうのが「手入れ」っていう概念だということで、環境基本計画の柱にさせてもらいました。これは今一人一人の話になってしまいましたけど、それは区もそうです。区役所っていう仕事もそうだし、会社っていう活動もそうだし、それぞれの立場で「手入れ」を取り入れていくというのは可能だというのが、環境基本計画で一生懸命言っていることでございます。
「手入れ」~住民参加で地域を守る
- パーソナリティ:いかにその先を考えて手入れして育んでいくのかというところではまさに関橋さん、シモキタ園藝部の皆さんなのかなと思うのですが、ぜひ普段の活動も教えていただけますか。
- 関橋さん:先ほど区長からご紹介いただいたように、小田急線の世田谷代田から下北沢、東北沢の3駅の間が地下化をされたんですけれども、その地上の線路の後の再開発として、下北線路街というものが2022年に完成しました。シモキタ園藝部はその下北線路街の緑というのを主な舞台として活動している市民団体になります。この再開発の内容を検討している段階から世田谷区の方では様々な住民参加の機会をご用意くださっていて、そういう場に私も参加するようになりまして、そういう場で現在のシモキタ園藝部につながる仲間たちが集っていったというような流れになります。この緑がもともと少なかった下北沢地域ですけれども、この機会に緑を増やしてほしいという声が世田谷区にも小田急さんにも届いて、現在のように歩いて楽しい緑がいっぱいの散歩道ができたという流れになります。そんな美しい緑が私たちの提案で出来上がったので、今度はそれを守らなくちゃというような責任感が芽生えたということになります。それと市民が関わることで、通常はメンテナンスが楽になるように、同じ種類の植栽をずらっと並べることが多いんですけれども、そうではなくて、いろいろな緑が混ざっていて、見て楽しいような緑っていうのが実現できています。
- パーソナリティ:森本さん、まさに住民参加で地域を守っていくということは大切ですよね。いかがですか。
- 森本さん:おっしゃるとおりだと思います。今、もちろん緑に着目されて非常に幅広い活動されていると思うんですけど、そのことが多分住民の方々のコミュニケーションにもつながっているだろうし、それが心の潤い、緑の潤いにつながっているんだと、とても貴重な活動だと思います。
- パーソナリティ:区長も、下北への思いも強くありますもんね。
- 区長:そうですね。「手入れ」という言葉で思い出すのは、実は二子玉川公園というのがもうできて10年以上経ちますけれども、できてすぐの頃に「世田谷いのちの森」を作ろうというプロジェクトがあって、スターバックスがあるところの近くですけれどもその斜面の土地にですね、国土緑化機構から1500本の苗木を供出してもらって、当時お元気だった宮脇先生(植物学者の宮脇昭氏)、植林の大家が鎮守の森を作ろうと。だから全然法則はなくて、気ままに植えてくれということで750人が集まったんですよ。親子とかおじいちゃん、おばあちゃんと孫3世代とか、とても皆さん熱心に植えて、その後でもやっぱり植えただけじゃダメで、ちゃんと手入れをやっていた。多分、関橋さんも関わってらっしゃると思うんですが、その結果、今ちょっともう見上げるような若い森に成長してきていて、5年目ぐらいでこんなにやっぱり大きくなるんだなって思いましたけれども、樹木が切り倒されるってことに私たち非常に危機感を持ち、なんとか保全したいと思う一方、宮脇先生の遺言で年に1回は森を作ってくれと、これもすごく大きな、目を開かされる出来事で、その時にやはり定期的に下草を刈ったり、あるいは少し弱っている木を伐採したり間引きしたり、そういったことがしっかりした森を作っていくということに欠かせないことだったのかなということがヒントになるような気がしました。
- パーソナリティ:今までのルーツも踏まえて、そして後半では今後における世田谷区の環境問題、環境の手入れについてもお二方、そして区長にお話を伺っていきたいなと思います。まだまだ番組は続きます。
緑も人も豊かになっていくような街づくり~シモキタ園藝部の活動
- パーソナリティ:「環境の手入れってナニ?!」というテーマでお話を伺います。ゲストには早稲田大学法学部教授で世田谷区環境審議会会長をお務めの森本秀香さんと、シモキタ園藝部代表理事の関橋知己さんをお迎えしています。環境の手入れというところでやはり伺いたいのが関橋さん、シモキタ園藝部は様々なご活動があるんですよね。
- 関橋さん:シモキタ園藝部では、まちの緑を自分たちの手でお手入れするということで、緑も人も豊かになっていくようなまちづくりを目指しているのですけれども、そうした活動に賛同してくださる方がとても多くて、現在ではメンバーが250人ぐらいにまでなっています。そうした人々を園藝部の部員と呼んでいるんですけれども、その方たちをつなぐ大事な理念として、一つ『循環』という考え方があります。サーキュラーエコノミーなんてことも最近よく聞くんですけれども、園藝部の場合では、下北線路街を一つの里山のように考えておりまして、緑の恵みの循環ということをしています。刈った草ですとか落ち葉ですとか、そうしたものはごみにして燃やしてしまうのではなくて、マルチングですとか、堆肥にしたりして活かしています。また一部はお茶にしたりしていますし、養蜂も行っていまして下北沢産の蜂蜜もできています。そうした蜂蜜とハーブティーのお店も運営していまして、そこがまち行く人が緑に触れる接点になっていると思います。また、様々なイベントですとかワークショップも行っておりまして、いろいろな機会に緑とその循環に今まで興味なかった人に興味を持ってもらえるようなことができたらいいなということでやっています。それで活動を続けてきて実感するのが、こうした活動がみんなにとって楽しいということだと思います。街の緑の役に立っているなとか、日頃もったいないなと思っていたことを解決できたりということが嬉しいんですよね。そうしたことに共感できる仲間ができるということ、そして互いに刺激し合ってどんどんいいアイデアが生まれてそれを実現できてしまう、そういうハッピーなサイクルが園藝部では生まれていると思います。
私たちでもできること
- パーソナリティ:まさに地域の皆様のパワーも感じるような区長、シモキタ園藝部、最近も足を運ばれたんですよね。
- 区長:はい、そうです。いろいろ見学したいという方を案内して、関橋さんにちょっとご紹介していただいたり、他の自治体の首長、市長とか区長の方も興味を持って何回も来ていただいています。そこのやっぱり鍵になるのは、住民と行政との協働作戦、参加と協働って言っていますけれども、やはり行政だけがやるとですね、どうしても「これ、じゃあ業者さんにやってもらおう」とすると、それこそツツジだけを並べた方が、手入れが簡単だねって、そうなっちゃいますよね。いろんな草花が四季折々の花を咲かすみたいな風には、なかなかしにくいんですが、やっぱりその区民の方がそれを望んで、実際にその植栽の管理費というのは出てはいますけれども、業者にそのことを頼んだらものすごく大変な細かい作業になってしまうのに対して、やっぱり住民が参加してイニシアチブを取ってこんなまちにしようよと言って議論したことを、本当に実現するというのがこの下北沢だけではなくて、例えば大きな公園づくりですね。野毛町公園という公園を今作っていますけれども、そういうところでも何十回とワークショップをやって実験的にいろんなことをやってみながら、やっぱり緑を基調に広げていこうと。それが世田谷区の中でいろんなところで小さなポケットパークみたいなところから大きな公園まで一斉に進んでいく。そして、森本先生が言われたようにグリーンインフラですね。「下水に水をいかに流さないかと」いうことが命に関わる問題になってきているので、そういうことを区民の一人一人が実はこの暮らしの中でできるんですよっていう、その意識の変容といいますかということを、子どもたちと一緒に進めていけたらいいなと思っています。
- パーソナリティ:森本さん、本当に自分ごとのように、環境をまさに「手入れ」ということで育みたくなりますね。いかがですか。
- 森本さん:はい、そうですね。今区長のおっしゃったこと、それから関橋さんがおっしゃった、楽しく、あるいは嬉しくって言われたこと、そういう気持ちを持ってですね、取り組むというのは、とっても大事なことだという風に思います。世田谷って90万人もいらっしゃるんですよね。これはこの90万人の力がですね、そこに向いて、そして一つの世田谷ブランドみたいなものを作っていただくと、日本も変わる。もっと言うと、世界も変わる可能性があると思うんですね。そういう宝箱って言うんですかね、そういうことが、いろんなところの生活の部分にあると思うので、それを「手入れ」っていうワードで皆さん考えていただくとありがたいなという風に思っています。
- パーソナリティ:まさに今後というところでも関橋さん、その取り組む大切さだったりとか、これからっていうところではいかがですか。
- 関橋さん:もう一つ私たちが大切に思っているのが、私たちが緑を手入れすることによって生物多様性も豊かになるってことができていったらいいなと思っていまして、もうだいぶ秋も深まっていますけれども、下北沢の野原っていう場所があるんですが、そこに朝に行くと、今でも蝶々がいっぱい飛んでいるんです。この野原ができたのは2022年で、まだほんの最近ですが、すでにたくさんの昆虫がいるってことが分かっているし、鳥も増えていますし、ちゃんと確認できてないんですが、渡り鳥もちょっと寄ってくれたりしているみたいなんですよ。なので、人が緑に手を入れることが生物多様性にもプラスになるってことが実感できて、そうしたことが皆さんのお庭でもできるので、世田谷じゅうに広がっていったら素敵だなと思います。
まとめ
- パーソナリティ:さあ、改めて区長、環境の手入れについてお話を伺ってまいりました。本日のまとめ、お願いします。
- 区長:はい。地球環境、これが気候危機という状況になってアラームが鳴りっぱなしですが、その時にもう1回復元をしていく自然のそのレジリエンスの力っていうことを後押しするようなことを、私たちは選んでいかなければいけないのかなと思います。そういう意味でその「手入れ」をし、今ある自然を傷めないでむしろ活気づけていく。そういうことを地道に世田谷区民があちこちでやり始めるということで、環境全体は悪化している中で少しでも押し戻して、人間らしい、あるいは生物にとって快適な環境を取り戻していく。そんな折り返し点になるといいなという風に感じております。
- パーソナリティ:世田谷区の皆さん一丸となって環境に対する誇りですとか、愛着が高まって緑を育んでいけますように、今回は「環境の手入れってナニ?!」ということでお話を伺わせていただきました。
- 保坂区長、森本さん、そして関橋さん、ありがとうございました。
- 3人:ありがとうございました。

写真:前列左より森本氏、関橋氏、保坂区長、後列パーソナリティ