学校等における医療的ケア実施ガイドライン 令和6年3月 世田谷区教育委員会事務局 世田谷区子ども・若者部 はじめに 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が令和3年9月18日に施行された。同法では医療的ケアと医療的ケア児が定義され、医療的ケア児及びその家族に対する支援についての基本理念や、国、地方公共団体等に対する責務が定められた。 区内には国立成育医療研究センターがあり、区内に在住する医療的ケア児は他自治体よりも多いと考えられる。区では、障害福祉部が中心となって、世田谷区医療的ケア相談支援センターHi・na・taの設立、医療的ケア児の笑顔を支える基金を活用した医療的ケア児へのキャンプ体験や非常用電源の配布といった、医療的ケア児が地域で安全・安心と豊かな生活を送ることができるための先進的な施策を展開してきた。 医療的ケアを必要とする児童・生徒に対しては、平成30年(2018年)度から喀痰(かくたん)吸引(きゅういん)、経管(けいかん)栄養(えいよう)等の配慮を必要とする区立小学校の児童に試行的に看護師を配置した。令和2年度から区立小・中学校、幼稚園において、令和4年度から新BOP学童クラブにおいて、本格的な看護師の配置を開始した。医療的ケア児と家族の意向を踏まえながら、教育委員会、区、区立小・中学校、幼稚園、及び新BOP学童クラブが連携し、安全で安心な学校、幼稚園、放課後の生活の実現に取り組んできた。 本ガイドラインは、医療的ケアを行ってきた区立小・中学校、幼稚園、新BOP学童クラブにおける実績と、医療的ケア児の家族や医療的ケアに関する専門家、学校の教諭等からの意見を踏まえ、すべての区立小・中学校、幼稚園及び新BOP学童クラブが、医療的ケア児とその家族の意思と選択を尊重した円滑な医療的ケアを実施していくことを目的に策定した。関係者の役割、医療的ケアの実施手順及び支援・相談体制を示すとともに、医療的ケアを実施する上で望ましい環境の整備の目安についても示している。本ガイドラインに基づき、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律で定められた基本理念、責務である医療的ケア児に対する適切な教育に係る支援と、家族の負担軽減を着実に進め、医療的ケア児が一層、住みやすい地域の実現をめざしていく。 なお、本ガイドラインは、教育委員会の「世田谷区教育振興基本計画」、障害福祉部の「せたがやインクルージョンプラン」で定められた医療的ケア児の教育支援、インクルーシブ教育の推進に関する具体な取り組みを示すものでもある。 本ガイドラインは今後も、医療的ケア児とその家族のほか、医療的ケア児を支える関係者の意見を拝聴し、適宜、より良いものに改定していく。    令和6年3月 世田谷区教育委員会事務局 世田谷区子ども・若者部                              目次 T 学校等における医療的ケアの概要 1 区の基本的な考え方 2 医療的ケア児への教育的対応 3 本ガイドラインで使用している用語の解説 4 現在の取り組み U 関係者の役割と学校における医療的ケアの実施 1 関係者の役割 2 学校での医療的ケアの実施に向けて 3 ヒヤリハットを含む事故、緊急事態が発生した際の対応 V 学校における人的支援体制 1 学校での生活 2 学校医療的ケア看護師の配置 3 学校医療的ケア看護師を支える体制 W 学校での生活における物的支援体制 1 医療的ケアに必要な衛生物品、医療物品、備品 2 非常時における必要物品・備品 3 医療的ケアの廃棄物 4 学校における環境整備 X 新BOP学童クラブにおける医療的ケアの実施 1 実施までの主な流れ 2 関係者の役割 3 人的支援体制 4 物的支援体制 Y 医療的ケアの実施にかかる相談支援体制・関係機関等との連携 1 医療的ケアの実施に関する相談窓口 2 BOPとの連携体制 3 切れ目のない一貫した支援体制 Z 参考通知等 参考 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 T 学校等における医療的ケアの概要                       1 区の基本的な考え方   以下の3つの視点を重視し、学校等での医療的ケアを実施していく。    視点1 医療的ケア児とその家族の意思と選択を尊重    視点2 医療的ケア児の状況に応じた、共に学び、共に育つことの保障    視点3 医療的ケア児の家族の負担の軽減 2 医療的ケア児への教育的対応   医療的ケア児は一人ひとりの状況が異なり、他の障害と重複している医療的ケア児もいるため、学びの場は区立小・中学校の通常学級、特別支援学級、特別支援教室のほか、東京都立特別支援学校が考えられる。   区の学びの場において、一人ひとりの状況に合わせた個別の教育支援計画(学校生活支援シート)を作成し、適切な医療的ケアと合理的配慮により、医療的ケアを必要としない子どもと等しく、共に学び、共に育つ機会を保障していく。   特に、医療的ケア児は体調や通院等の状況により、遅刻、早退、欠席を余儀なくされる場合が考えられるが、一人ひとりに応じたオンライン授業や補習等の指導内容や指導方法の工夫を行い、医療的ケア児の学習機会の確保と適切な指導評価を行っていく。 3 本ガイドラインで使用している用語の解説 (1)学校    本ガイドラインでの「学校」については、世田谷区立小学校・中学校・幼稚園・認定こども園を指す。    (2)学校等    本ガイドラインでの「学校等」については、世田谷区立小学校・中学校・幼稚園・認定こども園に加えて、新BOP学童クラブを指す。 (3)医療的ケア    医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)(以下、医療的ケア児法)において、「医療的ケア」とは、「人工呼吸器による呼吸管理、喀痰(かくたん)吸引(きゅういん)その他の医療行為をいう」と定められている。   医療的ケアは生活援助行為としての医療行為を指し、治療行為としての医療行為は含まない。また、医療行為は医師や看護師等の免許を持たない者は行ってはならないとされているが、本人や家族が行う一部の医療行為については、違法ではないとされている。 (4)学校等における医療的ケア   「学校等における医療的ケア」とは、学校において医師の指示書に基づき、必要に応じて看護師が行う、喀痰(かくたん)吸引(きゅういん)や経管(けいかん)栄養(えいよう)、気管切開部の衛生管理、導(どう)尿(にょう)、インスリン注射等の生命の維持、健康状態の維持・改善のために必要な医療行為を指す。   病気治療のための入院や通院で行われる医療行為は含まないものとされており、日常的に行われている生命の維持、健康状態の維持・改善のために必要な医療行為を伴う生活援助行為である。    緊急時にはその場に居合わせた人が緊急時対応マニュアルに従い、生命と安全の確保に尽力する。   ※ 次ページの「学校等における医療的ケアの内容」を参照。 (5)学校等における医療的ケア児    「学校等における医療的ケア児」の医療的ケアは、本人の医療的ケアの必要性を確認し、必要に応じて看護師を配置して行う。    医療的ケア児であっても、園児・児童・生徒が自ら医療的ケアの自立度等の状況を踏まえ、学校医療的ケア看護師を配置しない場合には、安全の確保のために必要に応じて教職員、支援員、介助員による介助や支援、学校生活サポーター等による見守りを行う。 「学校等における医療的ケアの内容」の表があります。   4 現在の取り組み   教育委員会事務局、子ども・若者部では、学校等においてすでに医療的ケア児への医療的ケアに取り組んでいる。 (1)医療的ケア児が必要とする学校医療的ケア看護師等の確保    医療的ケアの内容や自立度を踏まえ、学校医療的ケア看護師を確保するとともに、支援員、介助員による介助や支援、学校生活サポーターによる見守りを行う体制としている。 (2)通学に対する支援・負担軽減   @ 特別支援学級(肢体不自由)については、原則、通学バスによる送迎を実施し、通学に対する支援・負担軽減を図っている。   A 公共交通機関を使用して通学した場合は、「特別支援教育就学奨励費」または「就学援助費」において通学費を申請することができる。   B 「特別支援教育就学奨励費」の支給対象者で、疾患や障害に起因する身体の脆弱性により、徒歩や公共交通機関の利用による通学では生命の危険性があり、主治医の意見書によりタクシー等による通学の必要性が認められる場合には、「特別支援教育就学奨励費」の通学費として、タクシー等を利用した際の実費を申請することができる。 (3)医療的ケアを安全に行うための物品確保と環境整備    学校等での医療的ケアを安全に行うために必要な物品の確保や諸室の整備(既存設備の活用を含む)に取り組んでいる。  U 関係者の役割と学校における医療的ケアの実施                          1 関係者の役割   学校の生活において安全な医療的ケアの実施していくために、医療的ケア児に携わる関係者の役割を整理し、連携・協力して責任を果たしていくことが重要である。 学校等での生活における関係者の役割の表があります。 (1)学校長・園長   @ 学校における医療的ケアの総括   A 宿泊を伴う学校行事や校外活動等への参加判断   B 本人、保護者、医療的ケア児以外の保護者を含む関係者への説明、相談対応、支援   C 各教職員の役割分担の明確化   D 医療的ケア実施のための校内環境の整備   E 配属された学校医療的ケア看護師等の会計年度任用職員の勤務の管理   F 区・教育委員会への各種報告   G 主治医、医療的ケア指導医への連絡、情報共有、連携   H 外部専門機関との連携体制の構築、管理、運営   I 緊急時の体制整備   J ヒヤリハットを含む事故、緊急事態が発生した際の対応   (2)教職員   @ 学校医療的ケア看護師との情報共有、連携   A 医療的ケアの実施に関わる環境整備   B 個別の教育支援計画(学校生活支援シート)の作成   C 本人、保護者、医療的ケア児以外の児童・生徒・園児・保護者への説明と相互理解   D 緊急時対応マニュアルの作成協力   E 緊急時対応と事故防止対策の検討   F 医療的ケアに関する知識の習得   G (特別支援教育コーディネーター)校(園)内委員会の開催、運営 (3)養護教諭   @ (2)の教職員の内容   A 学校医療的ケア看護師、学校医、学校薬剤師、主治医、医療的ケア指導医と教職員との連携支援   B 養護教諭会を通じた医療的ケアに関する情報共有   C 医療的ケア児の健康状態の把握(学校医療的ケア看護師と連携)   D 医療的ケアに関する研修会の企画・運営への協力 (4)学校医療的ケア看護師(会計年度任用職員)   ※ 医療的ケアについて本人が実施する(自立している)ため、学校医療的ケア看護師を配置しない場合には、学校長、園長の指示のもと、学校全体で@、Aを担う。   @ 医療的ケアを実施するための医療器具や備品等の在庫管理   A 医療的ケア児の短期的・長期的なアセスメント、健康管理   B 教職員や保護者との情報共有、連携(必要に応じてケース会議への出席を含む)   C 医療的ケア指示書に基づく個別実施マニュアル、緊急時対応マニュアル等の作成   D 医療的ケア指示書、学校生活指導管理表に基づく医療的ケアの実施(医療的ケアの自立に向けた支援を含む)   E 医療的ケア実施の記録、管理、報告   F 教職員や医療的ケア児への医療的ケアに関する対応の助言   G 主治医、医療的ケア指導医、訪問看護師、医療機器製造販売元との情報共有、連携   H 緊急時の対応と事故防止対策についての助言   I 新BOP学童クラブの医療的専門看護師、児童課看護師、職員との連携、引継ぎ   J ヒヤリハットを含む事故や緊急事態が発生した際の学校長・園長への報告と原因究明への協力     (5)学校包括支援員、特別支援学級支援員、幼稚園・認定こども園介助員(会計年度任用職員)   @ 医療的ケア児の介助や支援   A 教職員や学校医療的ケア看護師との情報共有、連携 (6)学校生活サポーター(有償ボランティア)    医療的ケア児の見守り (7)教育委員会事務局   @ 医療的ケア児の就学・通学相談、医療的ケア児とその家族に対する教育や負担軽減に関する支援   A 学校との連携、学校の環境整備   B 本ガイドライン、関係マニュアル及び各種様式の策定と改訂   C 医療的ケア指導医の委嘱や会計年度任用職員の配置   D 学校医療的ケア看護師からの相談対応   E 学校生活サポーターに関する事務   F 医療的ケアに関わる予算措置   G 庁内関係所管、関係機関との情報共有   H 医療的ケアに関わる人材の確保、医療的ケアに関する研修の実施   I ヒヤリハットを含む事故や緊急事態等の原因究明への協力、事例収集 (8)主治医   @ 医療的ケア実施のための指示書の作成   A 緊急時対応についての指示、指導、助言   B 個別の手技に関する学校医療的ケア看護師への指導、助言   C 学校への情報提供(必要に応じてケース会議への出席を含む)   D 医療的ケア指導医との連携と情報共有   E 医療的ケアに関する研修への協力 (9)医療的ケア指導医   ※ 主治医とは異なる医師で、医療的ケアや在宅医療に知見のある医師が担う。   @ 医療的ケア実施に関する医療面の総合的な判断   A 主治医との情報共有、連携   B 医療的ケアの実施状況の把握、確認、指導   C 学校への情報提供(必要に応じてケース会議への出席を含む)   D 医療的ケア児、教職員、学校医療的ケア看護師等への指導、助言   E 個別実施マニュアル、緊急時対応マニュアルへの指導、助言、確認   F 医療的ケアに関する研修への協力 (10)学校医   ※ 医療的ケアや在宅医療に知見のある医師であれば、医療的ケア指導医を兼ねても差し支えない。   @ 医療的ケア児の学校生活における指導、助言   A 主治医や医療的ケア指導医との連携 (11)学校歯科医   @ 医療的ケア児の学校生活における指導、助言   A 主治医や医療的ケア指導医との連携 (12)学校薬剤師 @ 医療的ケア児が使用する薬剤の管理等に関する指導、助言   A 主治医、医療的ケア指導医との連携   B 医療的ケア児の調剤を担うかかりつけ薬剤師との連携 (13)保護者   @ 学校における医療的ケアの実施体制の理解   A 医療的ケア児の健康状態の学校への報告   B 学校への情報提供、連携への協力   C 緊急時対応、緊急時の連絡手段の確保   D 定期的な医療機関への受診、健康状態の報告   E 主治医へ指示書の作成の依頼と学校への提出   F 医療的ケアに必要な医療器具等の準備   G 学校と主治医との連携体制構築への協力 2 学校での医療的ケアの実施に向けて   学校医療的ケア看護師配置が必要な医療的ケア児の就学・入園が決定した学校は、前述の関係者の役割と本ガイドラインに基づき、医療的ケアの実施に向けて準備を進めていく。   個々の状況により、学校医療的ケア看護師による学校における医療的ケアの実施時期については異なるが、就学前機関等とも連携して速やかに実施できるように進めていく。 実施に向けたフロー図(例)   相談・聞き取り、医療的ケア児の観察 教育委員会で保護者からの相談、聞き取り、医療的ケア児の観察を行う。 教育委員会は児童課、幼稚園、保育園と相談状況を共有する。 保護者説明、医療的ケア実施申請書の提出 教育委員会から保護者に実施にあたっての説明を行い、医療的ケア実施申請書の提出を依頼する。 主治医による指示書の作成 保護者は、学校で医療的ケアを実施するにあたって、主治医に医療的ケア指示書の作成を依頼する。 保護者は、医療的ケア指示書を学校に提出する。 就学前機関での状況確認や保護者との面談実施 教育委員会は保育園や幼稚園主催のケース会議に参加し、情報共有を図る(必要に応じて、児童課も参加する)。 必要に応じて、学校は保護者との面談や療育機関を含めた就学前機関での状況を確認する。 学校医療的ケア看護師によるマニュアルの作成 学校医療的ケア看護師は、医療的ケア指示書に基づき、個別実施マニュアル、緊急時対応マニュアルを作成する。 学校(園)長、養護教諭の確認後、学校は保護者にマニュアルの確認を依頼する。 医療的ケア指導医による意見書の作成 教育委員会は、主治医とは別に医療的ケア指導医を定め、作成されたマニュアル等の内容についての意見を求める。 実施体制及び環境整備 学校において、実施体制及び環境の整備を行う。 個別の教育支援計画の作成 担任は個別の教育支援計画(学校生活支援シート)を作成する。 校(園)内委員会 学校医療的ケア看護師の配置、個別実施マニュアルや緊急時対応マニュアルの確認、実施体制等について、確認、検討を行う。 研修・訓練 必要に応じて、学校において研修・訓練を行う。 医療的ケアの実施 学校における医療的ケアを開始する。 ケース会議の実施 必要に応じて、ケース会議を実施する。 (1)相談    教育委員会で医療的ケアに関する相談を受け付けたら、保護者からの聞き取り、医療的ケア児の観察を行う。必要に応じて、児童課、幼稚園、保育園と情報を共有する。    教育委員会は保護者に説明を行い、学校での医療的ケアを希望される場合は、医療的ケア指示書を学校に提出するように依頼する。 (2)就学前機関での状況確認や保護者との面談実施   @ 支援教育課は幼稚園(乳幼児教育・保育支援課)や保育園(保育課)から情報提供を受け、保育園や幼稚園主催のケース会議に参加し、情報共有を図る。必要に応じて、児童課も参加する。   A 学校は必要に応じて、保護者との面談や療育機関を含む就学前機関での状況を確認し、医療的ケアに関する情報収集を行う。 (3)個別実施マニュアル、緊急時対応マニュアルの作成   @ 保護者の依頼、主治医からの指示書に基づき、学校管理職、担当教諭、養護教諭と連携し、学校医療的ケア看護師が、医療的ケアの実施手順をまとめた個別実施マニュアル、緊急時の対応手順をまとめた緊急時対応マニュアルを作成する。   A 作成したマニュアルは、学校(園)長、養護教諭の確認後、学校が保護者に確認を依頼する。確認されたマニュアルは学校から支援教育課に送付する。   B 支援教育課は医療的ケア指示書と合わせて医療的ケア指導医へ送付し、マニュアルの確認を依頼する。   ※ 主治医からの医療的ケア指示書は、保護者が主治医に作成を依頼する。作成された医療的ケア指示書は保護者が学校へ提出し、学校から支援教育課へ送付する。 (4)学校の生活における実施体制及び環境の整備    医療的ケア児の入学や進学等が決定した学校は実施体制及び環境の整備を開始する。   @ 医療的ケア児が学習を行う教室は、保健室や学校医療的ケア看護師が待機する部屋との位置関係や緊急時の搬送を考慮し、既存の教室を工夫する。   A 医療的ケアを行う教室の確保や清潔な環境を維持する。   B 医療的ケアに必要な物品の維持管理や保管場所を整備する。 (5)個別の教育支援計画(学校生活支援シート)の作成    保護者、本人の意向を踏まえた個別の教育支援計画(学校生活支援シート)を作成する。保護者の協力が得られる場合は、就学支援ファイルや小学校の時の個別の教育支援計画を提供してもらい、計画作成の参考とする。 (6)既存の校(園)内委員会における検討    学校における課題等について協議するために行われる校(園)内委員会を活用し、安全な医療的ケアを実施するための検討を行う。    校(園)内委員会では、医療的ケア実施にかかる計画や実施者の研修・実施、情報共有等について組織的に協議し、学校における医療的ケア実施の安全確保について確認を行う。 (7)研修、訓練の実施    必要に応じて、主治医や医療的ケア指導医の協力を依頼し、個別実施マニュアル、緊急時対応マニュアルをもとに学校で研修や訓練を行う。 (8)学校における医療的ケアの実施    原則、(1)から(7)までを経て、医療的ケア児の心身状況を踏まえた上で、学校での医療的ケアの実施を開始する。 (9)ケース会議の実施    学校での医療的ケアの実施開始後、医療的ケア児の状況変化や、医療的ケアやその他の支援について検討が必要な場合には、ケース会議を実施する。   ※ 必要に応じて、学校での医療的ケア開始前の校(園)内委員会の前後に開催してもよい。   ※ 必要に応じて、支援教育課、児童課、学校医療的ケア看護師、主治医及び医療的ケア指導医等の校外関係者も招集する。 3 ヒヤリハットを含む事故、緊急事態が発生した際の対応   学校での医療的ケアの実施において、事故に至らないヒヤリハット、医療的ケアの手順の誤り等の事故、急激な体調変化などを含む緊急事態が発生した際は、緊急時対応マニュアル等に従い、医療的ケア児の生命・安全確保を第一優先に対応する。 (1)個別の緊急時対応マニュアル等に従い、医療的ケア児の生命・安全確保を行う。 (2)学校医療的ケア看護師ほか、その場に居合わせた関係者は、学校長・園長に速やかに報告する。 (3)学校長・園長は支援教育課に速やかに報告する。 (4)校(園)内委員会またはケース会議を行い、原因究明と再発防止策を検討する。 (5)緊急時対応マニュアルを改訂する。 (6)学校関係者への周知や研修・訓練を実施する。 (7)学校長・園長は発生した内容、再発防止策、その後の対応等を報告書にまとめ、支援教育課へ提出する。 (8)支援教育課は事例を集積し、学校医療的ケア看護師の研修等でフィードバックする。 V 学校における人的支援体制                       学校において、医療的ケアを必要とする児童・生徒が、必要でない児童・生徒と共に学び、共に育つためには、個々の状況に応じた人的支援が必要である。医療的ケアを必要とする児童・生徒が安全・安心を実感し、学び、育ちの場において可能な限り、困りごとが起こらないように支援していく体制とする。 1 学校での生活   (1)平日   @ 教職員     担当教員が中心となり支援する。     状況に応じて、学校医療的ケア看護師、支援員等と連携し、学校全体で対象となる医療的ケア児に付き添いしやすい環境の整備や、円滑かつ柔軟な対応を行う。   A 学校医療的ケア看護師     医療的ケア児の健康観察を行い、適宜必要な医療的ケアを行う。また、体調や学習内容により、緊急事態の発生が予測される場合は経時観察を行う。必要に応じて、状態を記録し、保護者と共有する。   B 学校包括支援員、特別支援教室支援員、幼稚園・認定こども園介助員     必要に応じて医療的ケア児の介助や支援を行う。   C 学校生活サポーター     必要に応じて医療的ケア児の見守りを行う。   D 保護者     学校での医療的ケアは原則、本人または学校医療的ケア看護師が行うが、医療的ケアの実施項目、本人の状況、学校での生活の様子や行事等により、代替案などを検討した上でなお必要な場合は、保護者に対して校内待機の必要性と見通しを丁寧に説明の上、校内待機の協力を求め、医療的ケアの実施を依頼する。 (2)長期休業中の学校行事等    水泳教室や特別授業などの学校行事で通学をする場合には、園児・児童・生徒の身体状況に応じて体制を整える。       (3)校外学習    健康状態、医療的ケアの実施状況、学校医療的ケア看護師の体制、緊急時の対応(医療機関の確保を含む)を踏まえ、園児・児童・生徒の身体状況に応じて実施に向けた検討を行う。    なお、宿泊行事の医療的ケアの実施については、日中(学校生活時間帯)は学校医療的ケア看護師が対応する。夜間は看護師の勤務時間外であることや、学校医療的ケア看護師は医療的ケア児の夜間の健康状況を把握していないことから、保護者に夜間の医療的ケアの実施を依頼する。    医療的ケア児の安全と宿泊行事への参加を保障していくため、夜間に医療的ケアを必須とする医療的ケア児の保護者の宿泊行事同行に対する支援・負担軽減に取り組む。    また、看護師による宿泊行事中における医療的ケアの完全実施の可能性について、研究していく。    2 学校医療的ケア看護師の配置   (1)医療的ケア児の状況に応じた配置   @ 保護者から学校での医療的ケアの実施の申し出があった場合、聞き取りを行い、必要な医療的ケアの内容を精査する。   A 保護者から医療的ケア実施申請書が提出された場合、その後の主治医の医療的ケア指示書、指導医検診記録・意見書をもとに行われる校(園)内委員会と支援教育課との協議により、学校医療的ケア看護師の配置やその日時数について検討、決定する。   B 医療的ケアの内容や自立度により、学校医療的ケア看護師の配置にならない場合は、教職員、支援員、介助員による介助や支援、学校生活サポーターによる見守りを行う。 (2)状況変化に応じた学校医療的ケア看護師の配置    身体の状況変化に伴い、医療的ケアの内容が変更となり、学校医療的ケア看護師の必要性に変更が生じた場合は、新たな医療的ケア指示書、指導医の意見書をもとに校(園)内委員会を開催し、学校医療的ケア看護師の配置やその日時数について検討、決定する。 (3)人工呼吸器を使用する医療的ケア児の保護者の付添い負担軽減    人工呼吸器の使用は高度な医療的ケアであることや個々により状況が異なるため、別に定めたマニュアルに従い、段階的に保護者から学校医療的ケア看護師による人工呼吸器の管理に移行し、保護者の付添い(校内待機)の解消を図る。 3 学校医療的ケア看護師を支える体制   学校医療的ケア看護師は学校における医療的ケアを中心的に担うことから、学校医療的ケア看護師を支えていく体制は、継続して安定した医療的ケアの実施に重要である。  学校医療的ケア看護師は日常業務を行うにあたり、学校長または園長、教職員(担任、養護教諭)および支援教育課に相談することができ、相談を受けた関係者は相談内容に対して適切に対処する。  また、医療的ケアに関する医学的な疑問点や問題点が生じ、主治医、医療的ケア指導医、保護者及び医療的ケア児が利用している訪問看護師に相談をしたい場合には、以下の手順で行う。関係者の承諾が得られれば、2回目以降は(2)を省略し、学校医療的ケア看護師が直接連絡をすることも可能とする。   (1)学校長または園長・教職員(担任)のいずれかに相談する。教職員(担任)が相談を受けた場合は学校長または園長に報告する。 (2)学校長または園長は主治医、医療的ケア指導医または保護者に連絡し、学校医療的ケア看護師から連絡することの了承を得る。訪問看護師への連絡の可否については、保護者に対して照会する。 (3)(2)で了承が得られたら、学校医療的ケア看護師が連絡し、相談する。 (4)相談結果を学校長または園長・教職員(担任)のいずれかに報告する。教職員(担任)が報告を受けた場合は学校長または園長に報告する。    なお、医療的ケア児が使用する医療機器に関する技術的な相談については、学校医療的ケア看護師が医療機器製造販売元に直接相談しても差し支えない。 看護師を支える体制の図があります。 W 学校での生活における物的支援体制                   1 医療的ケアに必要な衛生物品、医療物品、備品   医療的ケアに必要な物品は、学校で安全な医療的ケアを行うために必要かつ汎用性が高い物品は学校・幼稚園が準備を行う。園児・児童・生徒の個別の状況により使用する医療器材や消耗品は保護者が準備、点検、補充を行う。  ※ 学校・幼稚園が準備するものについては、国の補助金の対象になる場合もあることから、購入検討時に支援教育課に照会する。  ※ 児童・生徒の負担軽減のため、学校は物品類の保管について、保護者と調整する。 医療的ケアの実施項目、準備を担う人ごとに、必要な物品を定めた表があります。 2 非常時における必要物品・備品 (1)災害時における必要物品については、3日程度、学校から動けなくなることを想定して、個別の状況により使用する医療器材や消耗品等の必要な物品を保護者が準備する。   学校は災害時における必要物品についても保管できる場所を確保する。 (2)使用期限がある医療器材等も含まれるため、災害時に必要な分を含めて在庫管理をしながら使用するか、期限が切れる前に新しいものに入れ替えて、古いものを日常的に使用するものに流用するなど、学校医療的ケア看護師(配置されている場合)を含む学校と保護者で協力し、適正な管理に努めるようにする。 3 医療的ケアの廃棄物  廃棄物について、処理を適正に行うとともに、廃棄方法の統一を図っていく必要がある。 (1)医療的ケアにより生じた注射針や体内に挿入したチューブ等は安全に留意して集め、保護者に持ち帰り、廃棄するよう依頼する。 (2)(1)以外の医療的ケアで生じた可燃ごみ、不燃ごみは原則、学校で廃棄する。 4 学校における環境整備   学校において、医療的ケアの実施のために、諸室と周辺環境の整備を行う必要があるが、医療的ケア児の学年、心身の状況及び医療的ケアの内容等により、必要な諸室とその場所、周辺環境は異なっている。   既存の施設については、工夫しながら有効活用することが求められるが、以下は、医療的ケアを実施する際の既存設備を工夫して対応する場合や、今後の改築時における整備の目安とする。   また、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律や世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例との整合も考慮する。   新BOP学童クラブについては、学校との調整を踏まえたうえで、施設の共用を検討していく。 (1)必要となる各諸室等の整備・配置    医療的ケアを安全、衛生的、円滑に行うためには、既存室や既存設備を工夫して活用することを前提としながら、医療的ケアに配慮した諸室の確保、整備と配置を進めていくことが望ましい。 各諸室等ごとの用途、留意点を定めた表があります。 (2)安全な学校の生活に向けた環境整備と配慮事項    安全な学校・幼稚園等の生活に向けて、諸室の整備・配置だけでなく、周囲の環境整備や配慮事項についても合わせて進めていく必要がある。 設備ごとの用途、留意点を定めた表があります。 X 新BOP学童クラブにおける医療的ケアの実施                      新BOP学童クラブは、保護者が就労等により、放課後に家庭で保護・育成に当たることのできない世帯の児童を対象に運営しており、多様な子どもが楽しく過ごせるインクルーシブな居場所として、区立校以外の学校に在籍している児童を含めて、医療的ケア児の支援を行っていく必要がある。保護者や学校、その他の関係機関と連携、協力しながら、医療的ケア児が安心して過ごせる工夫や環境整備に取り組む。  なお、以下に具体的に記載していない事項については、原則として、学校における対応に準ずるものとする。 1 実施までの主な流れ (1)医療的ケア児の保護者は、新BOP学童クラブあてに入会申請書を提出する際に、医療的ケアが必要な点を申し出てもらう。    (2)新BOP学童クラブ及び児童課では、保護者から医療的ケア児の状況や必要な医療的配慮について聴き取りを行い、主治医が作成した医療的ケア指示書の提出を依頼する。    聞き取り内容や「医療的ケア指示書」をもとに、必要な環境整備や対応を学校側と調整する。   必要に応じて、支援教育課と共に幼稚園や保育園のケース会議に出席し、情報把握を図るとともに、児童課と支援教育課で把握した医療的ケア児の情報を共有し、学校と新BOP学童クラブがともに支援体制について検討する。 また、例年12月に行う、翌年度の入会申請手続きを通じて把握した医療的ケア児の情報を学校と共有する。   ※ 医療的ケア指示書は、区立小学校に対する指示内容と違いがなく、主治医の承諾があれば、区立小学校に提出する指示書の写しでも差し支えない。    (3)調整結果を保護者に連絡し、必要に応じて、保護者、新BOP学童クラブ、児童課でさらに調整を行い、円滑な医療的ケアの実施が可能な体制を整える。 新BOP学童クラブの生活における関係者の役割の図があります。 (4)看護師を支える体制    医療的ケア専門看護師(児童課による委託)及び児童課看護師は、新BOP学童クラブにおける医療的ケアを中心的に担うことから、継続して安定した医療的ケアの実施に向けて、看護師を支えていく体制を整える必要がある。    看護師が新BOP学童クラブ内で業務を円滑に行えるよう、児童館長、新BOP事務局長、児童指導、及び児童課は、看護師の相談内容に応じて、新BOP学童クラブ内ケア会議を開催する等、適切に対処する。    また、こうしたケア会議での検討を踏まえ、必要に応じて、主治医、医療的ケア指導医、保護者及び医療的ケア児が利用している訪問看護師への相談や、学校医療的ケア看護師への相談を行う。 看護師を支える体制の図があります。 2 関係者の役割   放課後等の生活において安全な医療的ケアを実施していくために、医療的ケア児に携わる関係者の役割を以下のとおり整理する。(当該役割分担及び支援は、本マニュアル策定時の主なものを示したものである。実際の支援においては、当該役割分担を基本に関係者が相互に連携して必要な支援を行う。) (1)新BOP学童クラブ及び児童課の職員    職員と行う支援についてまとめた表があります。 (2)主治医、医療的ケア指導医、保護者    U章 1 関係者の役割に定める(8)主治医、(9)医療的ケア指導医、(13)保護者の取扱いに準ずる(「学校」は「新BOP学童クラブ」に、「学校医療的ケア看護師」は「医療的ケア専門看護師」に、「教職員」は「児童指導及び指導員」に読み替える)。 3 人的支援体制 (1)新BOP児童指導、及び指導員    児童指導が中心となり、指導員に必要な指示を行いながら、医療的ケア児の見守りや介助を行う。    状況に応じて、学校医療的ケア看護師等とも連携し、新BOP学童クラブへ来所する前に必要な医療的ケアを実施しておくなど、医療的ケア児が過ごしやすいための柔軟な対応を行う。    (2)看護師    日常的に看護師による医療的ケアが必要な児童に対しては、児童課の看護師または児童課が委託した医療的ケア専門看護師を派遣して、医療的ケアを行う。 4 物的支援体制 (1)医療的ケアに必要な衛生物品、医療物品、備品について    医療的ケアに必要な物品類は、原則として保護者が準備、廃棄等を行う。    その他、児童課は適宜学校から、学校や教育委員会が準備する必要かつ汎用性が高い物品のうち、消耗品を除く備品については共用するなど連携を取りながら必要な物品を用意する。 (2)新BOP学童クラブにおける環境整備    医療的ケア児の状況や医療的ケアの内容により必要な諸室や周辺環境は異なるため、以下の対応を基本に、学校及び関係部署と連携をとりながら、医療的ケア児の支援に適した環境整備を行う。   @ 医療的ケアを行う部屋の確保や清潔の維持を行う。 A 医療的ケアに必要な物品の維持管理、保管場所の整備を行う。   B 学校の改築時等には、医療的ケア児が生活をする新BOP室は、保健室や看護師が待機する部屋との位置関係や緊急時の搬送を考慮した教室配置を検討する。 Y 医療的ケアの実施にかかる相談支援体制・関係機関等との連携      1 医療的ケアの実施に関する相談窓口   医療的ケアの実施に関する相談については、支援教育課が窓口となり、担当所管と連携して相談に対応し、必要な支援を行っていく。 (1)入学・進学に関する相談窓口    世田谷区立学校、東京都立特別支援学校への入学・進学に関する相談については、支援教育課にて就学相談を行っている。就学相談では、就学先やどのような支援が望ましいか保護者の方の意向を尊重し、保護者と教育委員会が共に検討する。    また、通常の学級のみを希望する医療的ケア児についても、支援教育課で相談を受けたうえで関係所管と連携し、就学後に速やかに医療的ケアが実施できるように学校に対して調整を行う。 (2)入園に関する相談窓口    世田谷区立幼稚園・認定こども園への入園に関する相談については、各幼稚園・認定こども園または乳幼児教育・保育支援課が相談窓口となり、入園等に関する調整を行う。 2 BOPとの連携体制   医療的ケア児が、地域学校連携課が所管するBOP(遊びの基地)の利用を希望した場合は、事務局長と児童指導が個々の利用状況やケアの状況について保護者に確認、相談し、利用に向けた調整を進める。   また、地域学校連携課と各BOPは必要に応じて、在籍する小学校と当該医療的ケア児に関する情報共有や対応について協議を行う。 3 切れ目のない一貫した支援体制   医療的ケア児が必要とする医療的ケアは、ひとりひとり異なるとともに、時間の経過とともに内容も変化していく。身体の状態の程度により生まれてからすぐに医療機関、福祉関係機関とかかわる医療的ケア児もおり、就学前機関(幼稚園、保育園、療育機関等)、小学校入学、中学校進学にあたって、教育とのかかわりも増えていく。これらの関係機関等との連携により、切れ目のない一貫した支援体制の構築が必要である。 (1)就学支援シートと個別の教育支援計画の活用    小学校の就学時に保護者、就学前機関等に記入してもらい、学校等や関係機関等が情報共有することで、切れ目のない一貫した支援体制のための基礎とする。なお、就学支援シートは保護者の意思に基づき作成されるものである。    また、小・中学校では、個別の教育支援計画を作成し、計画に基づく支援を行うとともに、中学校については保護者の同意が得られたら、小学校の個別の教育支援計画を提供してもらい、支援の継続に参考とする。 (2)学校、就学前機関との引継ぎ    就学前機関から小学校、小学校から中学校へ進むにあたり、当該医療的ケア児に関する支援方法については、支援教育課や在籍園、在籍校が進学先へ引き継いでいく。   また、区外転出については、転出先の自治体の教育委員会の依頼に応じて、情報提供を行い、切れ目のない支援を継続していく。   (3)関係所管との情報共有    医療的ケア児は生活全般において配慮を要するために、教育委員会だけでなく、区長部局の多数の所管が関係することになる。したがって、入園、就学した医療的ケア児の情報を関係所管が共有しておくことは、その後の医療的ケア児への支援を円滑に進めるうえで必要であると考えられることから、関係所管と医療的ケア児の情報共有を行う。 (4)医療機関、福祉関係機関との連携    学校等や就学前機関で行う医療的ケアの質の向上のため、医療的ケア児や学校等が関係する主治医、医療的ケア指導医のほか、世田谷区医療的ケア連絡協議会等を通じて、福祉関係機関と連携していく。   (5)医療的ケアに対する理解促進・普及啓発    医療的ケア児に関わる関係者が、医療的ケアに対する理解を深めておくことが、適切かつ質の高い医療的ケアの実施や支援のために必要である。    教育委員会、学校管理職、教職員、支援員、介助員、学校生活サポーター、医療的ケア児以外の保護者等に対して、医療的ケアに対する理解促進のための研修や普及啓発を進めていく。 Z 参考通知等                             1 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の施行について(通知)(3文科初第1071号)   (令和3年9月17日 文部科学省初等中等教育局長) 2 学校における医療的ケア実施ガイドライン    (令和3年3月 福井県教育委員会) 3 都立学校における医療的ケア実施指針(改訂)    (令和3年3月 東京都教育委員会) 4 都立学校における医療的ケア実施の手引(改訂) 都立学校で医療的ケアを新規に実施するために  (令和4年3月 東京都教育庁都立学校教育部特別支援教育課・高等学校教育課) 5 学校における医療的ケアの今後の対応について(通知)(30文科初第1769号)   (平成31年3月20日 文部科学省初等中等教育長) 6 小学校等における医療的ケア実施支援資料〜医療的ケア児を安心・安全に受け入れるために〜   (令和3年6月 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課) 7 学校における医療行為の判断,解釈についてのQ&A(日本小児科学会雑誌 第124巻 第6号 1054−1060)  (令和2年6月 日本小児医療保健協議会 重症心身障害児(者)・在宅医療委員会) 参考 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律         ○医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 〔令和三年六月十八日号外法律第八十一号〕 〔総理・文部科学・厚生労働大臣署名〕 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律をここに公布する。 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 目次 第一章 総則(第一条―第八条) 第二章 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策(第九条―第十三条) 第三章 医療的ケア児支援センター等(第十四条―第十八条) 第四章 補則(第十九条―第二十一条) 附則 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、医療技術の進歩に伴い医療的ケア児が増加するとともにその実態が多様化し、医療的ケア児及びその家族が個々の医療的ケア児の心身の状況等に応じた適切な支援を受けられるようにすることが重要な課題となっていることに鑑み、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、保育及び教育の拡充に係る施策その他必要な施策並びに医療的ケア児支援センターの指定等について定めることにより、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資し、もって安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「医療的ケア」とは、人工呼吸器による呼吸管理、喀(かく)痰(たん)吸引その他の医療行為をいう。 2 この法律において「医療的ケア児」とは、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童(十八歳未満の者及び十八歳以上の者であって高等学校等(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部をいう。次条第三項及び第十四条第一項第一号において同じ。)に在籍するものをいう。次条第二項において同じ。)をいう。 (基本理念) 第三条 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児の日常生活及び社会生活を社会全体で支えることを旨として行われなければならない。 2 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が医療的ケア児でない児童と共に教育を受けられるよう最大限に配慮しつつ適切に教育に係る支援が行われる等、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、切れ目なく行われなければならない。 3 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した後も適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら日常生活及び社会生活を営むことができるようにすることにも配慮して行われなければならない。 4 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たっては、医療的ケア児及びその保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、医療的ケア児を現に監護するものをいう。第十条第二項において同じ。)の意思を最大限に尊重しなければならない。 5 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たっては、医療的ケア児及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにすることを旨としなければならない。 (国の責務) 第四条 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を総合的に実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を実施する責務を有する。 (保育所の設置者等の責務) 第六条 保育所(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所をいう。以下同じ。)の設置者、認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第六項に規定する認定こども園をいい、保育所又は学校教育法第一条に規定する幼稚園であるものを除く。以下同じ。)の設置者及び家庭的保育事業等(児童福祉法第六条の三第九項に規定する家庭的保育事業、同条第十項に規定する小規模保育事業及び同条第十二項に規定する事業所内保育事業をいう。以下この項及び第九条第二項において同じ。)を営む者は、基本理念にのっとり、その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事業等を利用している医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。 2 放課後児童健全育成事業(児童福祉法第六条の三第二項に規定する放課後児童健全育成事業をいう。以下この項及び第九条第三項において同じ。)を行う者は、基本理念にのっとり、当該放課後児童健全育成事業を利用している医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。 (学校の設置者の責務) 第七条 学校(学校教育法第一条に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校をいう。以下同じ。)の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校に在籍する医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。 (法制上の措置等) 第八条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 第二章 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策 (保育を行う体制の拡充等) 第九条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して保育を行う体制の拡充が図られるよう、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第五十九条の二第一項の仕事・子育て両立支援事業における医療的ケア児に対する支援についての検討、医療的ケア児が在籍する保育所、認定こども園等に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。 2 保育所の設置者、認定こども園の設置者及び家庭的保育事業等を営む者は、その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事業等を利用している医療的ケア児が適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、保健師、助産師、看護師若しくは准看護師(次項並びに次条第二項及び第三項において「看護師等」という。)又は喀痰吸引等(社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第二条第二項に規定する喀痰吸引等をいう。次条第三項において同じ。)を行うことができる保育士若しくは保育教諭の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。 3 放課後児童健全育成事業を行う者は、当該放課後児童健全育成事業を利用している医療的ケア児が適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。 (教育を行う体制の拡充等) 第十条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児に対して教育を行う体制の拡充が図られるよう、医療的ケア児が在籍する学校に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。 2 学校の設置者は、その設置する学校に在籍する医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。 3 国及び地方公共団体は、看護師等のほかに学校において医療的ケアを行う人材の確保を図るため、介護福祉士その他の喀痰吸引等を行うことができる者を学校に配置するための環境の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。 (日常生活における支援) 第十一条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族が、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、医療的ケアの実施その他の日常生活において必要な支援を受けられるようにするため必要な措置を講ずるものとする。 (相談体制の整備) 第十二条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族その他の関係者からの各種の相談に対し、個々の医療的ケア児の特性に配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に必要な相談体制の整備を行うものとする。 (情報の共有の促進) 第十三条 国及び地方公共団体は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体が行う医療的ケア児に対する支援に資する情報の共有を促進するため必要な措置を講ずるものとする。 第三章 医療的ケア児支援センター等 (医療的ケア児支援センター等) 第十四条 都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「医療的ケア児支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。 一 医療的ケア児(十八歳に達し、又は高等学校等を卒業したことにより医療的ケア児でなくなった後も医療的ケアを受ける者のうち引き続き雇用又は障害福祉サービスの利用に係る相談支援を必要とする者を含む。以下この条及び附則第二条第二項において同じ。)及びその家族その他の関係者に対し、専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の支援を行うこと。 二 医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し医療的ケアについての情報の提供及び研修を行うこと。 三 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。 四 前三号に掲げる業務に附帯する業務 2 前項の規定による指定は、当該指定を受けようとする者の申請により行う。 3 都道府県知事は、第一項に規定する業務を医療的ケア児支援センターに行わせ、又は自ら行うに当たっては、地域の実情を踏まえつつ、医療的ケア児及びその家族その他の関係者がその身近な場所において必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとする。 (秘密保持義務) 第十五条 医療的ケア児支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならない。 (報告の徴収等) 第十六条 都道府県知事は、医療的ケア児支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該医療的ケア児支援センターの事業所若しくは事務所に立ち入らせ、その業務の状況に関し必要な調査若しくは質問をさせることができる。 2 前項の規定により立入調査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。 3 第一項の規定による立入調査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 (改善命令) 第十七条 都道府県知事は、医療的ケア児支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その改善のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 (指定の取消し) 第十八条 都道府県知事は、医療的ケア児支援センターが第十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合において、その業務の状況の把握に著しい支障が生じたとき又は医療的ケア児支援センターが前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。 第四章 補則 (広報啓発) 第十九条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族に対する支援の重要性等について国民の理解を深めるため、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。 (人材の確保) 第二十条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるよう、医療的ケア児に対し医療的ケアその他の支援を行うことができる人材を確保するため必要な措置を講ずるものとする。 (研究開発等の推進) 第二十一条 国及び地方公共団体は、医療的ケアを行うために用いられる医療機器の研究開発その他医療的ケア児の支援のために必要な調査研究が推進されるよう必要な措置を講ずるものとする。 附 則 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。 (検討) 第二条 この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の実施状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。 2 政府は、医療的ケア児の実態を把握するための具体的な方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 3 政府は、災害時においても医療的ケア児が適切な医療的ケアを受けることができるようにするため、災害時における医療的ケア児に対する支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。