世田谷区子ども計画(第2期)後期計画 令和2から6年度 子どもは、一人ひとりが今を生きる主体であるとともに、未来の「希望」です。 子どもは、一人の人間としていかなる差別を受けることなくその尊厳と権利が尊重され、心も身体も健康で過ごし、個性と豊かな人間性がはぐくまれる中で、社会の一員として成長に応じた責任を果たすことが求められます。 世田谷区は子どもが健やかに成長・自立でき、また、安心して子どもを生み、育て、子育てに夢や喜びを感じることができる地域社会を区民と力をあわせ実現します。 令和2年3月世田谷区 第1章 計画の策定にあたって 策定の趣旨・計画期間・計画の位置づけ 区では、子ども・子育てにかかる施策を総合的に推進するため、平成27年度から令和6年度までの10年間を計画期間とする「子ども計画(第2期)」を策定しています。この計画に内包する「子ども・子育て支援事業計画」が令和元年度に最終年度を迎えたこと、計画策定以降、子どもの貧困の社会問題化、児童福祉法の改正により特別区が児童相談所を設置できるようになるといった状況の変化に的確に対応する必要があることなどから、令和2年度から令和6年度を計画期間とする「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」を策定しました。 この計画は、「世田谷区子ども条例」の推進計画として策定しています。また、子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援事業計画を内包するほか、子どもの貧困対策推進法に基づく子どもの貧困対策計画及び子ども・若者育成支援推進法に基づく子ども・若者計画を内包しています。 第2章 計画の基本的考え方 目指すべき姿 『子どもがいきいきわくわく育つまち』 すべての子どもが、家庭や地域・他者との関わりや多様な体験の中で、本来持っている力を存分に発揮し、喜びをもって健やかに育っていくまちを目指します。 保護者と区民、事業者等は、すべての子どもの子ども時代が豊かなものとなるよう、見守り支えていきます。 後期計画の基本コンセプト 『子ども主体』 目指すべき姿である「子どもがいきいきわくわく育つまち」は、子どもの視点に立つと、子どもが「楽しい」と思って「元気に」日々を過ごすことのできる状況であり、「子どもの権利」が守られる環境です。 子どもが健やかに育ち、成長していくため、遊び、表現し、安らぐための場が身近にあり、人間性を豊かにするための多様な体験や様々なことにチャレンジできる機会が確保されなくてはなりません。 すべての子どもが虐待やいじめ、また、障害の有無や家庭の経済状況などによって、守られるべき権利が侵害されることなく、安心して楽しく元気に過ごすことのできる環境が、身近な地域の中で具体化される必要があり、そのためには、予防的な取組みを推進していくことが重要です。 この計画では、計画全体を貫く基本コンセプトとして、「子ども主体」を掲げ、「子ども主体」を実現していく手段として、次の3つの視点を持って計画の重点政策や施策・取組みを組み立てました。 区は、この基本コンセプトのもと、本計画を推進していきます。 ◆ つなぐ・つながる 子どもが関わる場において、適切な居場所や支援に「つないで」いく人、寄り添って伴走できる人の存在が重要です。誰が「つなぎ」役となるのか、つなぎ役にはどのような専門性が必要でどのように育てるのかを考えながら施策や取組みを組み立て、推進していきます。 それぞれの場・支援が「つながっている」ことが切れ目のない支援のためには必要であり、地域資源のネットワークを強化し、連携・協力して重層的な支援を行う必要があります。 子ども期からの地域での主体的な活動・関わりを通じた育ちを経て、地域に関わりと愛着をもつ子ども・若者を増やし、その子ども・若者がやがて地域の中で大人、親へと成長し、今度は親の立場で地域に支えられながら安心して子育てをし、その子どもがまた地域の中で育つ、という「つながり」を地域の中で生み出していく仕掛けに努めます。また、保護者の立場の中であっても、支援を受けながら親としての育ちを得て子育てを楽しみ、今度は支援の担い手にまわるという、地域内で支援が「つながって」継続できる仕組みづくりに努めます。 ◆ 参加と協働 子どもが意見を表明する機会の充実を図るとともに声をあげやすい環境づくりに努め、子ども自身の主体的な「参加」や参画のもと、様々な施策・事業において子どもの声を尊重し、反映していく仕組みをつくります。 区民、保護者、子育て支援者、事業者などと「協働」して、地域の中で子どもが健やかに育ち、保護者が安心して子育てを楽しむことができる地域社会の形成に努めます。 子どもが関わるあらゆる場において子どもの権利が守られ、子どもを主体とした関わりができるよう、地域にとって協働相手となる区が果たすべき役割を明確に位置づけます。 ◆ 地域の子育て力 子どもが楽しいと思って、元気に日々を過ごすためには、身近な地域の中で、周りの大人や若者、さらには子どもに見守られ、励まされ、支えられながら、やりたいことに挑戦し、持っている力を発揮できる環境が必要です。 こうした環境の創出には、地域の子どもや子育てを気にかけ、応援する人を増やし、「地域の子育て力」を高めていくことが重要です。 地域の人が地域の子どもに関心とあたたかいまなざしを持って見守り、一緒に育てるといった意識・気運を醸成するとともに、地域の子どもや子育てを応援したいと思う人が思いきり役割を果たせるような仕掛けづくりに努めます 第3章 重点政策 本計画の基本コンセプトである「子ども主体」を基に、下記の4つの政策を重点的に進めます。 ① 子どもが地域の中で自ら生きる力を育むことを支えます 子どもが地域の中で主体的に活動できる場や機会を充実させ、すべての子どもが自ら生きる力を育むことができる環境を整え、他者との関わりや多様な経験を重ね自己肯定感を高めながら、地域・社会を中心となって担っていく若者、大人、親へと成長していくための基礎となる育ちを地域とともに支えます。 ◆子どもの権利擁護・意識の醸 成 ◆子ども・若者の地域・社会への参加・参画の推進 ◆すべての子どもが地域で豊かな社会体験を重ね、力を発揮できる場や居心地のよい安心して過ごせる場を身近にもてる環境整備 ◆乳幼児期の教育・保育の充実 ◆外遊びの推進及び環境整備 ◆地域で子どもを見守り、育ちを支える気運の醸成と地域人材の確保 ② 妊娠期から地域の中で子育てを楽しめるよう子育て家庭を支えます 妊娠期・子育て期を孤立感なく安心して生活できるよう、すべての子育て家庭が適切な地域の子育て支援につながる仕組みの充実を図ります。 子どもや保護者が身近な場で気軽に相談ができる体制を整えるとともに、児童館を地区における子どもの情報集約や見守り、居場所づくり等の拠点とし、多様な地域資源が連携・協力しながら適切な支援・見守りができるようネットワークの強化を図ります。 子ども家庭支援センターと児童相談所が、それぞれの持つ専門的な機能や権限を発揮し、それぞれの役割を果たしつつ、必要に応じて問題の解決まで協働で関わる「のりしろ型支援」の体制を構築し、気軽な相談から虐待等の要保護児童等の早期発見・早期対応に至るまでの切れ目のない児童相談行政の実現を図ります。 ◆身近な地区における見守りのネットワークの強化と相談支援体制の再構築 ◆妊娠期から地域につながる取組みの推進 ◆相談支援からつながる育児不安の軽減に向けた支援・サービスの充実 ③ 基盤の整備と質の確保・向上により子どもと子育て家庭を支えます 早期の保育待機児童解消と引き続き保育待機児童を発生させないよう、教育・保育施設・事業の整備等による保育定員の拡充を推進し、保育を希望する世帯が安心して子どもを預けることができる柔軟性の高い保育基盤の構築をめざします。また、子育て家庭のニーズに沿った教育・保育の多様な受け皿の確保や子ども・子育て支援の充実に努めます。 すべての教育・保育施設・事業の質の確保と向上を図ります。 ◆子育て家庭のニーズに沿った教育・保育及び子ども・子育て支援事業の基盤の整備 ◆教育・保育の質の確保・向上 ◆子ども・子育てを支える施設・事業に携わる専門人材の確保・育成 ④ 緊急対応の着実な運用により子どもの命と権利を守り、その後の地域生活を支えます 子ども家庭支援センターと児童相談所の強力な連携のもと、必要に応じて問題の解決まで協働した支援を行うことにより児童虐待の再発・連鎖を断ち切る児童相談体制を構築します。また、家庭養育を優先した社会的養護の受け皿の拡充と支援に取り組むとともに、措置や一時保護された子どもの権利が守られるよう権利擁護の仕組みを構築します。 ◆子どもの命と権利を守るセーフティネットの整備 ◆子どもの権利擁護の取組みの推進 ◆家庭養育を優先した社会的養護の推進 ◆地域で安心して暮らすことができるための環境整備と支援の充実 第4章 計画の内容(体系) 大項目1 子育て家庭への支援 中項目1 身近なつどいの場・気軽な相談窓口の充実 中項目2 身近な地区における相談支援・見守りのネットワークの強化 中項目3 妊娠期から地域につながる取組みの推進~世田谷版ネウボラの推進~ 中項目4 子どもと親のこころと体の健康づくり 中項目5 子育て力発揮への支援 大項目2 教育・保育の充実 中項目1 子育て家庭のニーズに沿った教育・保育の受け皿確保 中項目2 教育・保育のの質の向上 大項目3 支援が必要な子ども・子育て家庭のサポート 中項目1 要保護児童・養育困難家庭への重層的支援 中項目2 配慮が必要な子どもの支援 中項目3 生活困窮を抱える子どもの支援~子どもの貧困対策の推進~ 中項目4 ひとり親家庭の子どもの支援 中項目5 悩みや困難を抱えた子ども、家庭に課題を抱える子どもの支援 大項目4 質の高い学校教育の充実 中項目1 地域との連携・協働による教育 中項目2 「せたがや11+」 幼、小・中連携で実現する質の高い教育の推進 中項目3 多様な個性がいかされる教育の推進 大項目5 子どもの成長と活動の支援 中項目1 子どもが安心して過ごせる居場所、成長できる場・機会の充実 中項目2 子どもの地域・社会への参加・参画の機会の充実 大項目6 子どもが育つ環境整備 中項目1 地域の子育て力の向上 中項目2 社会環境の整備 中項目3 子どもの権利擁護・意識の醸成 第5章 子ども・子育て支援事業計画 (1)教育・保育事業 【保育定員(2、3号認定)に関する各年次の達成目標と定員拡大量】 確保総計 令和元年度20,324人、令和2年度21,406人、令和3年度22,240人、令和4年度23,122人、令和5年度23,122人、令和6年度23,212人、定員拡大量2,888人 【需要量見込み及び確保の内容と実施時期】 令和元年度需要量見込み及び確保の内容 1号認定12,200人+2号学校教育の希望が強い610人/12,582人、2号認定それ以外9,669人/10,728人、3号認定0歳3,286人/2,028人、3号認定1、2歳7,206人/7,568人 令和6年度需要量見込み及び確保の内容 1号認定7,960人+2号学校教育の希望が強い2,885人/12,582人、2号認定それ以外11,105人/12,078人、3号認定0歳2,381人/2,425人、3号認定1、2歳8,700人/8,709人 (2)子ども・子育て支援事業 【需要量見込み及び確保の内容と実施時期】 幼稚園による一時預かり 令和元年度実績見込み412,007人日、令和6年度需要量見込み542,568人日、確保の内容542,568人日 その他の一時預かり 令和元年度実績見込み204,166人日、令和6年度需要量見込み266,810人日、確保の内容275,966人日 ひろば事業 令和元年度実績見込み65か所、令和6年度需要量見込み80か所、確保の内容80か所 第6章 子どもの貧困対策計画 1.計画策定の趣旨 子どもの貧困対策の推進にあたっては、親の妊娠・出産期や子どもの乳幼児期における早期の課題把握から、子どもの学校教育段階、さらに子どもが卒業、就職して、社会的自立が確立されるまで、切れ目のない支援を行うことが重要です。また、子どもの貧困の背景には様々な社会的要因があることを踏まえ、子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、関係機関をはじめ地域が一体となり推進する必要があります。 このことから、これまでの取組みをさらに充実・発展させていくことも踏まえ、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づく子どもの貧困対策計画を策定しました。 2.計画の方向性 子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境に左右されることのないよう、また、保護者の子ども期からの貧困の連鎖を断ち切ると同時に、新たな貧困の連鎖を生まないよう、すべての子どもが健やかに育成される環境を整備していくとともに、ひとり親世帯のみならず、ふたり親世帯も含む生活困難を抱える子どもや保護者に対する支援を地域と連携しながら全庁的に推進していきます。 3.計画の内容 ①教育の支援 ・質の高い乳幼児期の教育 ・保育を通じた支援 ・学校における学力向上に向けた取組みの推進 ・地域における学習支援事業等の充実 ・家庭の教育費の負担軽減のための支援の充実 ・学校での気づきを契機とした早期把握・支援につなぐための体制強化 ②生活の安定に資するための支援 ・子どもの居場所づくりの充実 ・児童養護施設等を巣立った若者への支援の充実 ・住宅支援の推進 ・妊娠・出産期から生活の安定に向けた支援の充実 ・食育の推進に関する支援 ③保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援 ・求職時等の子どもの預かりの充実 ・個々の状況に応じた就労支援の促進 ・子育てと仕事の両立ができる環境づくりに向けた事業者への働きかけ ④経済的負担の軽減のための支援 ・子育てにかかる経済的負担の軽減 ・養育費の安定的な確保のための支援 ⑤支援につながる仕組みづくり ・当事者の視点に立った支援・サービスの周知や相談体制等の推進 ・支援者の気づきの感度の向上と連携強化 第7章 若者計画 1.計画の策定の趣旨、位置づけ 若者施策は子ども期で展開する施策と密接に関わっていることから、区では、子ども計画(第2期)で若者期を見据えた子育て支援を検討の視点に掲げて策定するとともに、今後の若者施策の取組みについて1つの章に掲げ、施策を展開してきました。 若者が健やかに成長し活躍できる社会を目指し、交流・活動を支える取組みや、就職氷河期という社会経済情勢を背景に社会問題化したニート、ひきこもりの問題への取組みを進めてきましたが、たとえば8050問題のように若者世代に留まらない課題への対応が求められる中で、若者世代での取組みや支援施策への期待が高まるなど、当事者や周囲の意識等も変容しています。 このことから、令和2年度から令和6年度を計画期間とした現在の状況に対応した計画を、子ども・若者育成支援推進法に基づく「若者計画」として位置づけ策定しました。 2.計画の内容 ①若者の交流と活動の推進 ・若者の交流と活動の場の充実 ・青少年交流センターと児童館の連携 ②生きづらさを抱えた若者の支援 ・支援につながりやすい仕組みづくり ・多機関で連携した支援 ③若者が地域で力を発揮できる環境づくり ・地域での若者の参加・参画の推進 ・若者の活動を支えるネットワークの強化 ④若者の社会に向けた文化・情報の発信への支援 ・若者の主体的な活動、参加・参画の機会を広げるための支援 ・安定・継続した情報発信の仕組みづくり 第8章 計画の推進 1.推進体制 本計画の推進にあたっては、個別事業の進捗とともに、計画全体についての進捗も公開し、区民や学識経験者等が参加する会議で評価・検証を行います。 ・世田谷区子ども・子育て会議 子ども・子育て施策の取組み ・世田谷区子ども・青少年協議会 若者施策の取組み 2.指標 【子どもの指標】 ・自分のことが好きだと思う子どもの割合 ・住んでいる地域のために、自分の力を役立てたいと思う子どもの割合 【保護者の指標】 ・子育てを楽しいと感じる保護者の割合 ・子育てしやすい環境だと感じる保護者の割合 【地域の指標】 ・地域の子ども・子育て支援に携わってもよいと考える保護者の割合